女子バレーボールチーム
ヴィクトリーナ姫路 ヘッドコーチ
アヴィタル・セリンジャー さん
どの瞬間も『百%』
ヴィクトリーナ姫路を
真に強いチームへ
117グループがスポンサーを務めるプロバレーボールチーム「ヴィクトリーナ姫路」。下部リーグに陥落したチームの救世主となったのが、前年までオランダ女子代表監督を務めていたセリンジャー氏。ヘッドコーチ就任1年目で、チーム初の完全優勝という見事な采配でチームはトップリーグに復活。SVリーグ参入後は6位(‘24-25)、5位(‘25-26)と、その快進撃にますます目が離せません。


チーム監督に就任された1年目(‘23-24)でSVリーグ(トップリーグ)に返り咲き本拠地の姫路は、ものすごく沸きました。
3年という短期間でここまで成長できたこと、そして、リーグ全体がレベルアップしている中、5位を成し遂げたことは本当に誇りに思います。本当に「短期間で」の部分を強調したいですし、ちょっと早すぎるかなと思うくらい。ヘッドコーチに就任した時に、チームスローガンとしてあえて漢字を使って『百%』と掲げましたが、まさに全員が100%最善を尽くした結果です。マイナスからスタートして、レベル7、8ぐらいまでは来たと言っていい。周りや自分自身が寄せる期待が思い通りにならないという苦い経験の過程で成長していくものですが、ここからが大変なところ。もっと上へ! と期待されていると思いますが、そんなに簡単ではないということも理解してほしいと思っています。

一番強化されたことは?
「勝って当たり前」この意識付けです。パイロットも医者も、手を抜くことは一切ないですよね。ですから私は、練習も本番もどの瞬間も100%を求めました。その結果、V2リーグでは練習試合から負け知らずで、1セット落としただけで全勝。SVリーグ参入後も、1年間の勝利数が過去5、6年の勝利数を上回りました。ブロック、アタック、サーブそれぞれのコンセプトをもってチーム一丸となること、そして精神的な強さがこのチームのカルチャーとなれば、常勝軍団になれると思います。
チームが掲げる『姫路から世界へ』というミッションについてどう感じていますか?
解釈にもよりますが、ファイティングスピリットに溢れたプレースタイルを見せる、世界中の人が私たちのバレーを見てインスパイアされる、なども含まれるかもしれません。また、自分が外国人監督ですので、選手は英語が身につくし、数年後には海外で活躍するというビジョンもあると思います。そういう意味でも、本当に世界に扉が開かれていると思います。

ウォーミングアップ後のミーティング。「今日気をつけるところは?」「心構えは?」などを選手に言葉にさせ、トップアスリートとして準備の大切さを理解できているか確かめる

シーズン終了直後の5月から練習試合を実施。若手選手にとっては、試合に出られる限られたチャンス。この日は海外のナショナルチームと5セット対戦した
監督の人生と共にあるバレーボールその魅力は?
16歳でバレーボール選手になると決めてから52年経ちますが、常にトップではありませんでした。もっと上を目指したい、勝ちたいという「飢え」。その飢えを満たしてくれるのがバレーボールです。コーチを始めたのも、私が到達した地点まで来たい選手に、私の経験や気持ちを伝えたいと思ったから。自分でプレーできない分、彼女たちのために負けないように努力し、忍耐強くいるようにしています。要求しすぎているように見えるかもしれませんが、選手たちが望むことを監督としてやっているだけです。
監督として、モットーとされていることは?
I say there are no shortcuts.勝つ監督になるのも、勝てるチームづくりも「近道なし」です。
26-27シーズンは、どんなチームになりそうですか?
5位から日本一のチームにするには時間がかかりますし、運も必要。今までやってきたことを継承しながら、もっともっと磨きをかけていきたいです。そのためにも「お互いにサポートする」とは、「本当に強いチーム」とはどういうことか、自分達の願いや言葉を現実化することを学んで欲しい。私の経験から言うと、すべてを投げ打ってでも個人のレベルを高めること。そこからお互いが一つになり、絆が強くなると思います。

通訳の阿部美奈子さんは、セリンジャー監督がアシスタントコーチを務めていた「オレンジアタッカーズ」時代、当時の監督で父アリー氏の通訳も担当。セリンジャー監督の指名でチームに合流した
少しお話を変えます。監督にとって20年ぶりの日本はいかがですか?
23年前に神戸を離れ、今回は妻と一緒に来日しました。姫路は神戸に近いということもあるし、とても居心地が良い。クラブチームにも温かく迎えてもらっていますし、家族もとても満足しています。


パレット読者の皆さんに、メッセージを
バレーボールの発祥はアメリカですが、技術的に素晴らしく、美しいバレーボールを作ったのは日本だと思います。ジャンプの高さやパワーは外国チームが勝っていますが、ゲーム運びやスキルなどは日本が世界一洗練されている。そういう着眼点で見ていただけると、日本のバレーボールはもっと面白く観られると思います。
■ 取材を終えて
選手やスタッフから「アヴィさん」の愛称で呼ばれているセリンジャー監督。一つひとつの質問に熱意をもって答えてくださる姿から、日本のバレーボールや選手たちに誠意とリスペクトを持って務められていることが窺えました。オフシーズンはゆっくりできそうですか? と尋ねると、「『次の試合を楽しみにしている』ことが自分のリラックス方法かも」とのこと。そんなアヴィさん率いるヴィクトリーナ姫路の熱い勇姿は、試合会場でぜひ。

■ プロフィール
1959年イスラエル出身。現役時代はオランダ代表としてオリンピックに2回出場。1992年バルセロナ五輪では銀メダルに貢献した。現役引退後は指導者となり、オランダ、イスラエルなどのナショナルチームのヘッドコーチを歴任。日本では『オレンジアタッカーズ』のアシスタントコーチ(1996~1999)、『久光製薬スプリングスアタッカーズ』のヘッドコーチ(1999~2003)として日本リーグ優勝に導いた。2023年5月から現職。
■ ヴィクトリーナ姫路 公式サイト